本日の市議会財政福祉委員会で、敬老パスのJR、名鉄、近鉄への利用拡大と利用上限回数の導入について方向性が示されました。実施は2022年2月から。JR、名鉄、近鉄の名古屋市内の運行区間で敬老パスが使えるようになります。利用者は敬老パスにチャージした上で、いったん運賃を支払って乗車し、後から市が運賃相当額を2か月ごとに利用者に返還するという方式です。利用回数の上限は年700回が妥当だと、健康福祉局は答弁しました。700回とは1週間あたり13回。バスと地下鉄を乗り継いで往復すると4回になるので、こうした利用は週3日までに制限されます。
利用上限回数を導入するのは、敬老パス事業費の「暫定上限額」を維持するためです。「暫定上限額」は、過去最大の事業費を消費税込みで超えない額として設定され、消費税10%ベースで145億円とされています。これを今後10年間、超えないようにするために、利用上限を700回にする。そうすれば約14億円の財源が浮くというものです。
しかし、仮に事業費に上限を設けるとしても、設定根拠を変えれば金額が変わってきます。①市の財政負担額を上限にすれば、事業費が過去最高だった2003年度は一部負担金の導入前なので、10億円余りにのぼる一部負担金収入を加えると、事業費の上限は155億円余りになります。②敬老パス事業費の一般会計予算に占める割合を上限にすると、事業費が過去最大だった2003年度は1.34%でしたが、今年度は1.14%に減少しており、2003年度の1.34%を上限とすると167億円になります。このように、145億円という金額は、財政負担額でも、財政負担割合でも、過去最大と比べて実質的に市の負担を減らすものであり、上限額とはなりえないものです。
しかも、「暫定上限額」を超えないという呪縛にとらわれて、利用回数に上限を設けると、敬老パスの利用を抑制しようとする心理的圧力になるでしょう。財政福祉委員会での岡田ゆきこ議員の追及に、健康福祉局はこのことを否定できませんでした。利用上限回数の導入は、「高齢者の社会参加を支援し、もって高齢者の福祉の増進を図る」という敬老パスの目的を後退させるものといわざるをえません。