河村市長による「検閲」は憲法違反――「表現の不自由展」中止要請に抗議する
開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展の一つである「表現の不自由展・その後」が、8月3日限りで中止になりました。中止に追い込まれた契機となったのが、2日に河村たかし市長が大村秀章県知事(実行委員会会長)にたいして行った中止要請です。日本共産党名古屋市議団は8月5日、河村市長にたいして、今回の発言に強く抗議し、「表現の不自由展・その後」の再開を求める申し入れを行いました。
河村市長は、同企画展が「日本国民の心を踏みにじる行為であり・・・行政の立場を超えた展示が行われている」と表明していますが、同企画展は、美術館などで一度展示されたのに撤去されたりした作品などをその経緯とともに展示し、「(表現の)自由をめぐる議論の契機を作りたい」(同企画展実行委員会あいさつ文)として企画されたものです。その中止を求めた河村市長の発言は、「議論」さえ封殺するものであり、憲法21条が保障する「表現の自由」を侵害するものです。しかも、憲法21条は検閲を禁止しています。市長が、展示物の内容に口をはさみ、展示を中止させるというのは、まさに憲法違反の事実上の検閲にほかなりません。
憲法21条で、「・・・一切の表現の自由は、これを保障する。・・・検閲は、これをしてはならない。」としているのは、先の戦争に突き進んだ時の政治権力によって「表現の自由」が侵されたことの反省に立ったものです。「表現の自由」が脅かされるときは、国民の人権が脅かされるときです。文化・芸術を自由に創造し、また鑑賞することは国民の基本的な権利であり、それを保障することが行政の責務です。「表現の自由」を侵害する河村市長の発言は、行政の長としての資格を欠いたものと言わざるをえません。