名古屋天守閣の木造復元は急ぐべきではない――共産党が反対討論
本日の市議会本会議で、日本共産党の西山あさみ議員が、名古屋城天守閣の木造復元を盛り込んだ補正予算にたいして反対討論を行いました。全文を紹介します。
反対する理由は、名古屋城整備検討調査と銘打って、名古屋城天守閣の木造復元に本格的に踏み出す予算が計上されているからです。
第1は市民の意見を聞かず、市民合意のない中で木造復元へと舵をきったことです。当局は7月1日の経済水道委員会で、「木造復元を目指す」という方針を撤回し、複数の「選択肢を示しながら、市民の意見を聞き、調査結果などを丁寧に説明する」という方針を示しました。ところが、市民の意見を聞くこともなく、木造復元に向けた技術提案交渉方式による契約手続きを開始するというのは、市民そっちのけと言わざるを得ません。昨年2月に実施されたネットモニターアンケートでは「耐震改修」が7割を超えたように、木造復元についての市民合意はありません。市民アンケートを行うというのなら、補正予算を提出する前に実施すべきです。
第2は2020年7月のオリンピックまでに竣工という無謀な方針となっていることです。当局は委員会で、事業者募集の条件として2020年7月までの竣工を明示しました。市の調査では、天守閣本体だけでも、解体に3年、復元工事に6年、合わせて9年。しかも、御殿の工事と重複しないよう「本丸御殿完成後に木造復元に着工するのが望ましい」という結果が出ています。こうした調査結果を棚上げにする工期の設定は資材や人件費の高騰をまねき、事業費が跳ね上がることはあきらかです。
第3は概算事業費も明らかにせず、財源のめどがたたぬままでの強行は市民の暮らしに犠牲を強いる恐れがあることです。木造復元といっても木材や仕様により270億円~400億円と大きな幅があります。概算事業費も示さず事業者まかせにするのはあまりにも無責任です。国からの補助金確保のメドも立っておらず、市の財政見通しも厳しいもとで、巨額の市費を投入すれば市民の暮らしに大きな犠牲を強いることになりかねません。
第4は、「特別史跡名古屋城跡全体整備計画」では、天守閣については耐震改修を進める方針であるにも関わらず、木造復元に方針を転換することは、この「全体整備計画」との整合性がとれないことです。
以上の点から、天守閣の木造復元には大きな問題があり、いま急ぐべきではありません。