12月11日、愛知・日本軍「慰安婦」問題の解決をすすめる会が結成されました。結成のつどいで私は、「慰安婦」問題をめぐる名古屋市議会での論戦について紹介しました。
「河野内閣官房長官談話」
「日本軍慰安婦問題について日本政府に誠実な対応を求める意見書提出に関する請願」が、名古屋市議会に提出され、9月2日の市議会総務環境委員会と9月議会(9月28日)で議論が行われました。
私が議会で発言し、議論となったポイントは三つあります。一つは、「河野内閣官房長官談話」において、日本政府が旧日本軍の関与や強制性を認めていることについてです。
1993年に日本政府が公表した「河野内閣官房長官談話」では、「慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」と旧日本軍の関与を認めています。さらに、「慰安所における生活は、強制的な状況の下で痛ましいものであった」「本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり」と強制性を認めています。私は委員会の審査で名古屋市当局に、「河野談話の内容が日本政府の一貫した基本的立場だと考えるが、どのように考えているか」と質問したのです。市側は答弁で、2008年10月、国連の自由権規約委員会からの質問に日本政府が、「(河野官房長官)談話に示されたこのような立場は、日本政府の一貫した基本的立場である」と回答していることを紹介してくれました。
ところが、自民党の市会議員が、「強制性については証明できていない」と発言したのです。この自民党の議員は、9月議会の本会議で私が請願の採択を求めて討論した際にも、議事進行を掛けて、「強制性の問題については、わが党に所属しておりました河野談話のことで、まことに私も残念なことでありますけれども、その後の研究の中で、強制性はなかったということが広く資料等により証明されておることは周知の事実だ」と発言しました。これにたいして私もすぐさま議事進行をかけて、「河野談話で日本政府として強制性があったことを認めている。その後の国会の論戦でも、あの安倍元首相でさえ、河野談話を継承すると言わざるをえなかった」と反論しておきました。
自民党の安倍晋三国会議員は河野談話を攻撃する急先鋒でしたが、首相になった直後の国会で、日本共産党の志位委員長の代表質問にたいして、「『従軍慰安婦』問題についての政府の基本的な立場は、河野官房長官談話を受け継いでいる」と答弁しています。強制性を認めた河野談話が、日本政府の基本的な立場であることは、安倍首相のときも、政府は否定できなかったのです。
アメリカ、オランダ、欧州議会、韓国などで
二つ目は、慰安婦問題に関する世界の動きです。
私は、委員会の審査で、日本政府に公式の謝罪と歴史的責任の受け入れを求める決議を採択した国はどこか聞きました。市当局は、「アメリカ、オランダ、カナダ、欧州議会、韓国、台湾」だと答えました。
また、国連の人権委員会、人権小委員会、女性差別撤廃委員会などからも繰り返し勧告などが出されています。たとえば、2008年の国連自由権規約委員会の最終報告では、日本政府に対して「『慰安婦』制度に対する法的な責任を認め、率直に謝罪し、……適切な補償を行なうための……措置をとり、本問題について生徒及び一般の公衆を教育」することなどの対応を求めています。女性を連行して監禁し、性の対象にするというようなことは到底容認できない違法行為・犯罪行為であることが、国際社会で共通の認識になっているからです。私は、政府が慰安婦問題で誠実な対応をとらなければ、日本が世界から取り残されると思っています。
日韓基本条約で決着済みか
三つ目は、慰安婦問題は日韓基本条約で決着済みの問題なのかという点です。
自民党の市会議員が、委員会の審査でも、本会議の議事進行でもこの問題を持ち出しました。本会議の議事進行では次のように発言しています。「日本と韓国は日韓基本条約を結んでおります。日韓基本条約の締結交渉に関する外交文書の中で、韓国政府が協定締結により個人の対日請求権が消滅することを確認しております。……したがって、ただいま共産党の田口議員が申し上げられたことは、日韓基本条約、国と国とが結んだ条約に反する」。
これにたいしても私は議事進行の中で、「韓国では、請求権の問題について、最近、裁判で判決が出まして、韓国政府として日本政府に対して請求権問題については交渉をしたいという話があるわけですから、日韓では一致していない問題だ」と反論しておきました。韓国の憲法裁判所は今年8月30日、韓国政府に対し、「慰安婦」問題は1965年の日韓請求権協定の対象外であり、韓国政府は日本政府と外交交渉すべきである、との決定を下しているのです。
「慰安婦」問題の請願は、委員会では私の他に民主党の一人の議員も賛成しましたが、本会議の採決ではこの民主党の議員も棄権しましたので、共産党以外に賛成はなく、否決されてしまいました。たいへん残念でした。被害にあわれた女性たちは高齢で次々にお亡くなりになっています。被害者が生きておられるうちに、日本政府としての心からの謝罪と補償を行なうことが急がれています。