6月24日の名古屋市議会で私は、徳山ダム導水路(木曽川水系連絡導水路)事業からの撤退を求めて質問しました。
2009年度に凍結された導水路事業は、国による検証作業が大詰めを迎え、着工に向けて動き出そうとしています。名古屋市は、河村市長が建設容認へと方針転換したことを受け、今年5月に事業への参画の継続を表明しました。しかし、名古屋の水道は、木曽川の水で十分足りていて水は余っています。木曽川の給水可能量は日量160万㎥あるのに、一日平均給水量はその半分以下の74万㎥(2022年度)です。私は、「徳山ダムの水が、平常時においても量的確保のために必要という立場か」と質問。上下水道局長は、「非常時に必要不可欠」というだけで、平常時の必要性を語れませんでした。
河村市長は、建設容認へと方針転換するにあたって、導水路事業の新たな使い道=「新用途」を提案しました。ところが、この提案では「当初目的である量的確保に加え」てと、量的確保が前提とされています。河村市長は水需要予測と現実とが「3倍も違う」と言ってきました。「それなのに、どうして量的確保という当初の目的はそのままで、導水路事業への参画を継続するのか」という私の質問に、市長は「ダムを造ってしまったので、市民のために生かせるように使い方を考えた」としか答弁せず、「しょうがない」とつぶやいていました。
渇水になっても、節水は必要ですが、木曽川だけで対応は可能です。一日最大給水量も一日平均給水量も、この間、減少傾向にあります。それがⅤ字回復するという〝高位〟の予測は、信ぴょう性に欠けます。Ⅴ字回復しても、一日平均給水量は平成6年渇水相当の木曽川の給水可能量を下回っています。「量的確保のため」という当初の目的は、明らかに成り立たなくなっています。
市長が提案した「新用途」について、私はその有効性や実現可能性について質問しました。第1の提案は、専用施設を造って導水路から直接取水することにより、事故などで木曽川から取水できない場合に対応するというものです。名古屋市は、犬山市(2か所)と一宮市にある取水口から木曽川の水を取水しています。木曽川から取水できない事態が生じたら、揖斐川の水を直接取水することができても、市民生活に多大な影響を与えます。揖斐川から取水できる量(毎秒1㎥)は、木曽川から取水している量(毎秒10㎥)の10分の1しかないからです。リスクに対しては、導水路があれば万全というわけではありません。
第3の提案の堀川への導水については、私の質問に上下水道局長は、「導水する水の位置づけ」の整理・検討が必要と答弁しました。これは、名古屋市が確保している利水分を堀川導水に転用するのではなく、導水路事業のもう一つの目的である長良川と木曽川の河川環境を改善するための水の活用を検討するということです。環境目的の水の活用では、名古屋市が確保している毎秒1㎥の水は余ったままになります。
新用途の提案に対して国交省中部地方整備局は、導水路事業の「検証結果を踏まえ」て検討等を行っていくとの意向を示しています。私は、「導水路の着工までに、3つの新用途が具現化される見通しはあるのか」と質問。上下水道局長がはっきりした見通しを答弁しなかったので、「新用途が導水路の着工までに具現化されなくても、導水路事業に参画し続ける考えか」と質問すると、河村市長は「田口さんに聞きたいけど、造ってしまった徳山ダムをどうするんだね」と逆質問。市長には反問権はありません。私の質問に河村市長は答弁不能に陥りました。
新用途なるものは、河村市長が導水路の建設容認へと舵を切るための方便にすぎません。私は「(導水路事業は)無駄に無駄を重ねるものであり、水道料金の負担増となって、未来世代により大きなツケを回すことになる」と指摘し、導水路事業からの撤退を求めました。